法人化にかかる費用とは?

個人事業主として事業が成長し、社会的信用を得たい、または株式で資金を調達したいと考えた時、「会社にした方が良いかも」と思うことがあるでしょう。その際に検討するのが法人成りです。では、法人成りにかかる費用はどのくらいなのでしょうか?また、新規に会社を設立する場合と比べて、費用に差はあるのでしょうか?
この記事では、個人事業主が法人成りする際の具体的な費用について、わかりやすくご紹介します。

会社設立において2つの選択肢

会社設立には、個人事業主としてのスタートと、最初から会社(株式会社や合同会社)としてのスタートの2つの選択肢があります。これらは「新規会社設立」と「法人成り」として明確に区別されます。「新規会社設立」の場合、会社が最初に所有するのは資本金のみです。つまり、設備や車両、土地などの資産は、設立後に購入し、会社の資産として登録されます。ゼロから事業を立ち上げる形です。一方、「法人成り」は、個人事業主として所有していた資産や負債をそのまま新たに設立する会社へ引き継ぐケースです。個人事業主時代の現預金や売掛金、固定資産(建物、機械、車両など)も、新会社の財産として移行されます。同時に、事業に関連する負債(買掛金や借入など)も会社に引き継がれます。ただし、個人のプライベートなローン(住宅ローンや教育ローンなど)は、法人化した会社に移行することはできません。会社が引き継げる負債は、事業に直接関連するものだけです。

個人事業主から法人化の流れ

法人成りは、個人事業主が事業を法人化することで、新規に会社を設立する「新規会社設立」とは異なります。違いを理解したところで、法人成りのプロセスについて詳しく見ていきましょう。

法人成りの流れは次のステップです:

  1. 新しい会社を設立する
  2. 個人事業主として保有していた資産や負債を、新しく設立した会社に引き継ぐ
  3. 個人事業の廃業手続きを行う

新規会社設立の場合は、1つ目のステップで完了しますが、法人成りの場合は、個人事業を廃業するための手続きが必要です。したがって、個人事業主としての活動を正式に終了させる手続きを忘れないようにしましょう。

新しい会社設立にかかる費用

会社設立費用
合同会社 株式会社
定款印紙代 紙の定款:4万円
電子定款:0円
紙の定款:4万円
電子定款:0円
定款認証代  0円(認証手続きそのものが認証不要) ①「資本金の額等」(後記*参照)が100万円未満の場合、「3万円」
②「資本金の額等」が100万円以上300万円未満の場合、「4万円」
③その他の場合、「5万円」
謄本代 なし 2,000円(250円×8枚)
登録免許税 最低6万円資本金の1,000分の7(0.7%)の金額が6万円を上回る場合、その金額 最低15万円資本金の1,000分の7(0.7%)の金額が15万円を上回る場合、その金額が必要
(資本金) (最低1円) (最低1円)
合計 最低6万円+資本金 最低18万2千円+資本金

株式会社の維持にかかる費用

税金

法人を設立すると、たとえ事業が赤字であっても税金の支払いが免除されることはありません。特に個人事業主とは異なり、利益が出ていない年でも法人は最低限の税負担が発生します。具体的には、法人住民税(均等割)として、最低でも約7万円を納める義務があります。

さらに、従業員数が50名を超える、他の地域に支店や営業所を設置する、あるいは資本金が1,000万円を超えるといった要件に該当する場合は、税負担が増加します。このため、法人設立を検討する際には、単に事業計画だけでなく、税務面での最適化も重要です。従業員数や資本金額をどのように設定するかは、将来的な税負担に大きく影響を与えるため、しっかりと検討することが求められます。

結果として、法人にとって税金は変動費ではなく、ほぼ固定費として扱うべき項目です。そのため、事業開始時から税務戦略を含めた経営計画を立てることが、会社の安定した運営において不可欠です。

専門家への顧問料

会社を設立すると、事業年度が終了した際に決算書を作成し、税務署などに提出する必要があります。しかし、決算書の作成には会計や税務の専門知識が求められ、初心者が独自に対応するのは困難です。そのため、多くの企業では税理士に依頼して決算業務を代行してもらうのが一般的です。

税理士を顧問として雇う場合、毎月の報酬が発生します。報酬額は税理士ごとに異なりますが、通常の相場は月額3万~5万円程度です。また、決算時には追加で費用がかかり、これも売上規模や取引量に応じて変動します。特に、決算書作成の費用は会社の経営状況に左右されるため、事前に税理士と相談して見積もりを取ることが大切です。

税理士の費用は経営の重要な固定費の一つとして計画に組み込むべき要素です。財務の透明性を保ちながら、適切な税務申告を行うためには、信頼できる税理士をパートナーとして選ぶことが重要です。

社会保険料

法人を設立すると、必然的に社会保険への加入が義務付けられます。この社会保険料は、売上や利益に関係なく、法人化した時点から発生する固定費となるため、慎重な資金計画が必要です。

社会保険料の負担額は、役員や従業員の人数、そして役員報酬や給与額によって異なります。一般的に、会社が負担する社会保険料の目安は、従業員の給与の約15%ほどです。例えば、30万円の給与を支払っている場合、会社はその従業員に対して月々約4万5千円の社会保険料を負担することになります。

また、個人事業主であっても、一定の業種を除き、5人以上の従業員を雇用している場合には社会保険に加入し、保険料を負担する義務が生じます。法人・個人事業を問わず、社会保険の加入は大きな経費となるため、事前にその負担をしっかりと把握し、経営に組み込むことが重要です。

PAGE TOP